黒部通信 VOL.10

 宇奈月ダム・出し平ダムの連繋排砂
 
(2001年6月20日:雨)

 宇奈月ダムは昨年(平成12年)10月に完成したが、主たる目的である排砂が出来ないため、今だ竣工に至っていない。昨年は排砂をするだけのまとまった雨量がなかった。排砂をするには濁流を充分に希釈するだけの水量を要する。しかも上流7kmにある出し平ダムと連繋して排砂しなければならない。やはり梅雨全線が活発化するこの時期が排砂の条件を兼ね備えている。
 黒部川は、我国屈指の急流河川でその流域には大規模な崩壊地が数多くある。いいかえれば黒部川に流れ込む谷のほとんどが崩壊地といっても過言ではない。その為ダムには豪雨の度におびただしい土砂が流入し、そして堆積する。
 黒部川の関西電力・出し平ダム(昭和60年完成)と国土交通省・宇奈月ダムは本格的な排砂ゲートを備えている。出し平ダムはこれまで8回の排砂をしている。最初の排砂は平成3年に行われた。続いて平成6年2月に行われたが、いづれもヘドロ化した土砂が黒部川や富山湾に流れ環境問題となった。今でも富山湾沖合いの海底ではヘドロの層が見られる。ダムの湖底に堆積した落ち葉等が混ざった土砂が2〜3年すると腐敗し、ヘドロ化するところに問題がある。その為に毎年排砂が必要となり、今回の全国初の連携排砂となった。 
宇奈月ダムの水位を下げる為の放水 堰堤の直下の放水口
 6月19日、黒部川上流部でまとまった降水量があるのが確認され、出し平ダムでは排砂が行われた。それを受けて宇奈月ダムではダムの水位を低下させる為3門の洪水吐きゲートが開けられた。濁流が轟音を立てて流れ出る。黒部川流域の激しい雨と、雪解け水により、なかなか水位が下がらない。ダムの排砂は水位を完全に下げ自然の川の流れに近い形で行われる。
宇奈月ダム湖の水位を下げる 水位を下げると、もとの河原が出てくる
 その後は河道に溜まった土砂をさらに押し流すため、一旦湛水した水を24時間にわたり追加放流し一連の作業が終わる。こうして連繋排砂は6月19日に始まり、23日に地元関係者が見守る中で終わった。
宇奈月ダムの放水水量の増えた黒部川
 この後も8月末までに出平ダムで毎秒480トン以上、宇奈月ダムで650トン以上の出水があれば再びダムをからにして、流れ込む土砂をそのまま通過させる通砂が行われることになっている。ダムにあまり土砂をためず、まとまった出水がある時に自然に近いかたちで定期的に流してやるのが一番良い方法だと思う。
 黒部川の流域の地質は風化しやすい新期花崗岩である。そしてその崩壊地は人を容易に寄せ付けない難所に集中している。大自然の中にこれだけの建造物を構築したのだから、これからも永遠に黒部川流域の砂防事業に着手しなければならない。

宇奈月ナチュラリスト会員
延楽・専務 濱田政利

壁紙:ダムの放水(宇奈月ダムで撮影)


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