黒部通信VOL.5

セレネ美術館特別展
田渕俊夫 ベトナムーバイクの音が聞こえる
2000.4.28――6.28


アルペンルートが4月20日に全線開通し、黒部峡谷鉄道も4月26日に部分開通した。
宇奈月温泉の観光シーズン到来である。
黒峡谷鉄道駅前の高台に自然に融け込むかのように卵形の建物、宇奈月国際会館セレネがある。その2階にあるのがセレネ美術館である。平成5年8月にオープンし、黒部の自然を題材にした作品展示で、多くの観光客を楽しませてくれた。今も平山郁夫先生をはじめとする7人の協力作家が、作品を制作している。
ほとんどの作品が院展や日展に出品されるので、毎年少しづつ収蔵作品が充実している。

セレネ美術館は年中無休なので展示がえはいつも営業が終わってから実施される。毎回徹夜の作業である。時には翌日の営業時間に間に合わないこともある。知られざる仕事の一面である。
真夜中の美術館は、作業を進める担当者だけであるが、空気が張り詰めている。それは新たな作品の梱包が解かれ、セレネの気の中で御対面するが故である。
作品を展示する場所を周りの作品と相談しながら決め、展示する高さも作品と対話しながら決める。拘ると限がないので、どこか
で妥協しなければならない。
展示作業の中で最も難しいのが作品にあてる照明の作業である。照明を当てる角度や照度によって作品の感じがまるで違ってくる。作品を展示する場所によっても同じことが言える。作品の理解の仕方は、人それぞれによって異なるが、自分なりに作品を理解し、作品を最高の状態で展示したいと常に思っている。

今回は、セレネ美術館協力作家の田渕俊夫先生が2000年幕開けに発表された新作をメーンにした展覧会である。大変大きな作品で、セレネ美術館の第2展示室のスペースにピッタリ当てはまる。3つの壁面を使っての展示であり、まるでこの展示室に収めるために描かれたような作品である。


昨年の12月田渕先生のアトリエにお邪魔した時は、大変な驚きであった。壁面を埋め尽くすように立てられたパネルの数。そこには緻密な線で大量のバイクと人が描かれている。幾つものバイクと人が重なり合っている。それはバイクとそれを運転している人が丹念に一人ずつ、そして一台づつ描かれている。重なっているところは黒一色のように見えるが線の集合体である。私も目を凝らし一本づつの線を追っかけていたがどの線がどのバイクの車輪で、どの人物に繋がっているのか途中で見失ってしまう。
 非常に自由な発想で意表を突く作品であるが、そこには田渕先生の周りを凌駕する自信と、ますます巨大化するエネルギーがベトナムバイクを通して強烈に伝わってくる。
 同じ人物が移動するかの様に、しかもだんだんとはっきりと描き出される。西暦2000年を一つの区切りとして、ベトナムも作家もこれから凄まじく変わっていくという強い意思のような物が感じられる。
 
作品の展示期間は6月28日まで。


の他に黒部峡谷の作品も展示されている。

この機会に日本画家「田渕俊夫」の世界をぜひ味わっていただきたいと思います。

                                 
セレネ美術館長 濱田政利 

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