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| 晩夏の僧ヶ岳登山 僧ヶ岳の植生について |
| 僧ヶ岳(1,855m)は宇奈月町、黒部市、魚津市の三境に位置する山で、2,000mの北アルプスの峰では最も日本海に近い山である。したがって厳冬期の気候は想像を絶する厳しさがある。魚津市から見ると両翼を思いっきり広げた穏かな形の山である。 春になると雪形が、旅の僧が尺八を吹き、馬を引く姿に見えるところからその名前が由来している。私にはその雪形が僧という字に見える。虚無僧のように見えるという人もある。それぞれ連想するものが違うようである。 今回の登山は、僧ヶ岳の植生について実際に見て学ぶことが目的である。 僧ヶ岳は黒部川の左岸に位置し立山連峰の北方に延びた末端に、大きな山を突き出して、周辺へ放射状に山谷を走らせている。立山山系の北端にあるが、孤立峰のような独立した山体を形成しているので、植物の分布あるいは植生の状態から見ても他には無い個性的な特色を持った山岳である。 登山コースとしては宇奈月コース、黒部コース、魚津コースとあるが今回は宇奈月尾根を中心とする植生状況と、特徴ある植物を学ぶ為、宇奈月コースと途中から黒部コースをとる。 宇奈月温泉街は標高224m。途中の平和観音がある大原台までは観光客の車がよく行き交う。このあたりから黒部川に面する斜面に鬱蒼と茂るトチ林を望むことが出来る。林道・僧ヶ岳別又線の1,043mの広場まで車を使う。広場からは後立山連峰の朝日岳、白馬三山、唐松岳、五竜岳、鹿島槍の連山を見渡す事が出来る。烏帽子尾根ルートまで林道を使って移動する。 ■トチ帯----標高200m〜600m 宇奈月温泉街(224m)から大原台を過ぎ第一登山口(600m)までの間である。春には宇奈月スキー場の大地を赤く彩るカタクリ。道路沿いにはミチノクエンゴサク、エゾエンゴサク、キクザキイチゲ、ハルトラノオのしおらしい花が咲いている。 ■ブナ帯----標高600m〜1450m 標高580mあたりからブナが出現するがブナ帯のブナ樹相は貧弱である。この植生帯の上限近くの標高1420mの個所にあるスギ、コメツガ、ネズコ等の針葉樹によって構成される混交林こそ異色ある存在として注目される。この間はシダ類が多くある。 シダ科(クモノスケシダ、イワウサギシダ、ヒメサジラン、コケシノブ、オオコケシノブ) 蘇 類(ウチワチョウチンゴケ、シッポゴケ、スギゴケ) マイズルソウは1080mから見られる。この時期は花が終わっている。ハート型の葉が特徴的である。ツバメオモトは1300mからみられ蒼い実をつけていた。ユキツバキも多く1200mが上限である。残雪の中に咲く赤い花は魅力的である。 1230m付近からオオシラビソが見られ、1400mからチングルマ、イワイチョウ、アオノツガザクラが見られる。 ■ダケカンバ帯----標高1450m〜1600m 1450m付近からダケカンバやオオシラビソが目立つようになる。針葉樹の強い匂いは全身を内から浄化してくれる。キヌガサソウ、シラネアオイ、サンカヨウ、ゼンテイカの花が目立つようになる。特にキヌガサソウは近年採取され少なくなっている。 この個所で珍しいのは高山植物が局地的に繁茂している事である。標高が低いにもかかわらず見られるのは、やはり気候の厳しさによるものであろうか。オオバキスミレやオオサクラソウの花が可憐に咲いている。 代表的群落としては、ダケカンバ―チシマザサ―ヤマソテツ群落、ゼンテイカ―イワイチョウ群落である。 ■草原帯----標高1600m〜1750m この地帯は布施川の谷頭部の斜面と僧ヶ岳頂上から御前に及ぶ中だるみの鞍部に相当する地形に発達した風衡草原である。谷頭部にはオオイタドリが団魂状群落をなしているが、それより山稜に向かってゼンテイカ、トウギボウシ、タカネマツムシソウ、シモツケソウ、ウメバチソウ等の色とりどりの花が咲き乱れる。特に秋にはオオイタドリが紅葉し草原一面を赤く彩るのである。 上部では布施谷より山稜に向かって潅木状のミヤマホツツジ、キャラボク、ミネヤナギ、シナノキなどが縦列に生える生垣群落も見事である。
■オオシラビソ帯----1750m〜1855m(僧ヶ岳頂上) 仏ヶ平から頂上にに向かう稜線は急坂でチシマザサを下にシナノキ、キャラボク、ミヤマヤナギが混み合って生える潅木林の中を押し分けて登るが、平坦になるとミヤマヤナギがハイマツ状に生え、その林縁にはクロマメノキやコケモモなど見られる。クロマメノキはラズベリの一種でいずれもジャムにできる。これより頂上付近の湿地にはナンキンコザクラの小群落や、イワイチョウの大群落が見られる。 頂上付近は狭い平坦地をなし、風雪に耐えているといった短幹旗型樹形のオオシラビソ林があり、林床にはハクサンシャクナゲが生育している。ここからの毛勝山の山容は素晴らしい。 曽ヶ岳は孤立峰であるため、風当たりが強く、寒暖の差が激しいので山麓から頂上までの間に植物帯が圧縮された形で分布している稀有な山である。 登山道を整備して沢山人に自然を体験してもらいたいと思うが、反面、自然破壊も否めない。自然界の許容範囲の中で自然とうまく付き合っていく術をいつも模索してならない。
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| 宇奈月ナチュラリスト研究会会員 宇奈月遭難対策協議会救助隊員 延楽 専務取締役 濱田政利 |